2012/8/10

「モダンオーストラリアン」その真価とは?

マルチカルチャーの交錯地、メルボルンだからこそ育まれた

「料理の鉄人」が今も尚オーストラリアで大ブーム。2011年6月、メルボルンで開催されたイベント「Iron Chef」では、陳健一氏と坂井宏行氏の来豪に、会費450ドルにも関わらず約500名の食通が集った。そして、そのイベントを率いたのが2人のシェフ。鉄人達に「これ程楽しかった人はいない!」と言わしめた彼らの素晴らしいパーソナリティに魅了される。

荒金育英

Mark Normoyle

兵庫県生まれ。オーストラリア・メルボルンのスターシェフ。ビクトリア州一のファインダイニングに輝いたTAXI DINING ROOMのHead Chefを経て、現在MATHIS GROUPのコンサルタントシェフをする傍ら、BOYNTONS WINERY DININGのExecutive Chefも勤める。ニックネームは「金ちゃん」。

シェラトンホテルグループのUluru Ayers Rock resortのモダン・オーストラリアンダイニング、Kunia でDemi-Chefを勤め、5つ星ホテル、シェラトン・ミラージュホテルに着任。その後メルボルンに移り住みHotel SofitelでSous Chefとして活躍し、オーストラリアで名高いプライベートクラブ、Australian Clubのシェフに就任。2009年よりRACV City ClubのExecutive Chefとしてキッチン・チームを率いる。

お2人にとって料理とは?

マーク氏 いつも何か新しい世界や違った世界を見せてくれるもの。経験ももちろん大事ですが、もっと大事なのは料理に対する姿勢です。

荒金氏 趣味がないと良く言われますが、趣味であり、仕事でありまさに人生そのものです。そしてハッピーであることが大事。オーストラリアに来て感じたのは、みんなが食事を楽しんでいることです。日本では接待なんかも多いけど、本当に楽しいんかな? と思ってしまう。そして自分が楽しいと思わないとお客さんも楽しませられない。これも海外に出たからかもしれなけど、料理ほど人をつなぐものはないと思っています。文化や人種は違っても、料理を楽しむ感覚は世界共通のものです。
 

口に入れた瞬間に来る「何だ!?」という衝撃

メルボルンは人種のるつぼ、アジア人からヨーロッパ人まで、多彩な顔ぶれが集まる。特にギリシア人はアテネの次に多い程だ。そんな環境の中で、「モダンオーストラリアン」が確立されていった。日本、中国、韓国、タイ、マレーシア、シンガポール、インド、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャ…様々な要素が、時にはスパイス的に、時には大胆に取り入れられていく。荒金氏曰く、オーストラリア人はパーンと弾けるようなスパイシーさは苦手で、タイのスウィート&サワー&ホットのような、フレッシュなテイストを好みがち。彼らのテイストも鑑み、試行錯誤しながら進んで来た。最初はフレンチ+和食の融合で始めたが、それだけでいいのかな? と、異国の食材を知るために幾つかのグロッサリーでバイトをしたこともあると言う。また食文化の違いも重要で、例えば、オーストラリアではレモングラスをそのまま刻んで食べるので、売られ方が異なる。そんな所からもアイデアを膨らませていった。

今回の来日は、「Iron Chef」の際にMCを務め、アボリジニーアートのプロデューサーでもある内田真弓さんが企画する食事会のためだったが、そこで振る舞われた料理にも様々なアイデアが満載だった。4種類のカナッペは、1つ目はビクトリアのゴートチーズに柿のジャムと赤かぶのパウダーを合わせたもの、2つ目は鳥羽産のオイスターにスペイン産12年物のホワイトバルサミコビネガー、3つ目のパンプキンスープにはジンジャーを、4つ目は、メアリー王女もお気に入りだったというかにのお寿司。ソイビーンペーパーで巻かれており、最後にギリシャのKATAIFI SHREDDED PASTRYを乗せたもの。ソースはレモングラス、コリアンダー、みりん、米酢が使われており、まさに無国籍だ。「一体何が入ってるのか?」と質問が飛び交った。



荒金氏が手掛けるレストランの一つ、木漏れ日が美しいワイナリー「Boynton」。ガーデンがレストランに。

 

荒金氏がオープンしたレストランAKA-CHO-CHIN。ヒラマサなめろうや信州蒸しなど、日本の小料理屋のようなメニューも並ぶ。


2011年Iron Chefが開催された、マーク氏がExective chefを務めるホテルRACV City Club。
メルボルンの中心地に位置する。


ホームへ先頭へ前へ戻る