2019/7/20
持続可能な世界へ
SATOKOのオーガニックな「食」のつぶやき
滅多にスイーツを買わない私が贔屓にしているパティスリーがある。福岡に本店を構えるオーガニックパティスリーだ。その哲学には信念を感じる。
まず、人工的な着色料や化学的な香料、食材を極力排除することから始まる。自然の摂理に沿ったものが調理の前提となるのだ。全国の農家から旬の素材、海外からも厳選した素材が届き、その素材力を活かした美しいスイーツができあがる。オーガニックスイーツを作っているお店は増えてきたが、ほとんどが全国展開をしていない。なぜなら、いろいろな問題が立ちはだかるからだ。最初の問題はオーガニック素材の確保だろう。それも全国展開であればかなりの量の安定的な仕入れ先が必要となる。次に価格だ。オーガニックの良い素材を仕入れるとなると、原材料コストが高くなる。したがって、販売価格も高くならざるを得ない。しかし今、高くても安心安全なものを買いたいと思う消費者は増えているのだ。
SDGsという言葉をご存じだろうか? SDGsとは「Sustainable development goals」で持続可能な開発目標のこと。国連加盟国すべてが同意した、2030年までに達成すべき17の目標が明記されている(さらに169の達成基準に分けられている)。これはあらゆる種類の人々、地球人みんなの共通目標だ。世界が掲げる17の目標の1番目にくるのは「貧困をなくそう」、2番目は「飢餓を0に」だ。次に(3)健康、福祉、(4)教育と続いていく。
では貧困や飢餓をなくすためにはどうしたらいいのか? それにはまず、食糧廃棄を止めることだ。実は日本の食糧廃棄は世界一である。その量およそ1800万トン。そのうち、売れ残りや期限切れの食品、食べ残しなど食べられるのに棄てられている食品が500~800万トン。本当に恥ずべきことなのだが、日本ではそのことを知らない人が多い。また世界のごみ焼却炉の約3分の1が日本にある。ごみ焼却炉の数にも驚くが、それだけの量を棄てているため当然のことで、廃棄した食品の始末にも莫大な費用がかかっている。世界全体の食糧援助が約400万トンであることを考えると、実にその2倍もの量が棄てられているという現実に胸が痛む。
前述したオーガニックパティスリーはフードフィロソフィを掲げているのだが、それがまた素晴らしい。「“オーガニック素材や自然由来素材を中心とした食文化”の創造と継承を生産者とともに目指し、すべての人が自然の摂理を感じ、心身ともに健康で幸せであることを願います」。これを聞いて特別なことだと感じるだろうか。オーナーは特別なことをしているのではない、当たり前のことをしているだけだと言う。しかし、現代はこの当たり前のことができていないのではないだろうか。このパティスリーはSDGsが提唱される前から当たり前のことをきちんとやってきたのだ。
世界はオーガニックに向かって進んでいる。アメリカをはじめ、ヨーロッパの国々もオーガニックへの道を歩み始めた。日本もそろそろ方向転換をする時だろう。2018年7月に発表されたSDGs達成ランキングにおいて日本は156ヶ国中15位。トップ5は、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ドイツ、フランス。日本が達成されていると評価されたのは(4)質の高い教育をみんなに、のひとつのみ。これから日本政府や企業はSDGsの達成に向けてどのような取り組みをしていくべきなのか。「食」は生きていく上で最も重要なファクターだ。その「食」を大切にしなければ、教育など成り立たないと思うのだが。
石橋さとこ
『安心安全な食をスタンダードに』をモットーに、食育プロデューサーとしてイベントや講演会を多数企画。SOLAアカデミー主宰。「衣食住と心」を整えることで、心身ともに健康でより豊かな人生を楽しむことをコンセプトにした学びの場「COME TO LIFE」を開講。食と栄養と健康のセミナー講師。ナチュラルフードプロデュースも手掛ける。また未来の子供たちの健康と地球環境を守るための活動も行っている。
- 石橋さとこ