2014/4/10
新しいシェフを迎えた
ブッフェレストランの今
店を変えるにはどうすればよいだろうか。素材を変更したり、メニューを新しくしたり、内装を改修したりと、色々な手段がある。だが、これらを含めて、シェフを交代することが店を最も大きく変える手段なのではないだろうか。昨年シェフが代わった人気のホテルブッフェがいくつかある。新しいシェフたちは、これまでの人気をどのように持続させ、さらに発展させていくのであろうか。
インペリアルバイキング サール 帝国ホテル
「伝統の味を守っていきながら、変えていかなければならないものは変える」白鳥真樹シェフ
- これまで以上に手間をかけた前菜を創作【帝国ホテル 東京】
インペリアルバイキング サールは日本におけるバイキングの発祥であり、バイキングという言葉の生みの親だ。1958年のオープン以来、常にトップを走ってきた。2004年に全面リニューアルを施して、新しく生まれ変わる。そこから9年を経た2013年7月に、シェフが下川明宏氏から白鳥真樹氏へと交代した。ここでまたバイキング発祥の店が大きく変わろうとしている。
本格的なフランス料理に近づける
- 帝国ホテル伝統のポテトサラダはしっかりと伝えていく
ブッフェでは珍しい蝦夷鹿の赤ワイン煮を提供したり、鴨のスモークに甘いカボチャのソースを合わせたりしている。冷製の前菜も、冷やすだけで完成するものだけではなく、焼いてから冷やす冷製フランも出すようにした。手間やコストはかかるが、本格的なフランス料理により近付けようとしている意図が伝わる。
プレゼンテーションを独自にアレンジ
- ブッフェではまだ少ないジビエ料理も積極的に提供
プレゼンテーションに対する意識も高い。美味しいだけではなく、目でも楽しめるようにと、飾り付けにもこだわっている。白鳥氏は海外研修中にライティングを勉強した。海外と日本は文化の違いがあるし、店の雰囲気も異なっているので、そのまま取り入れることはできない。だが、独自にアレンジして取り入れられるものを取り入れていくつもりだ。
- 白鳥真樹シェフ
フランス料理通の間でも評判の高い帝国ホテルのメインダイニング「レ セゾン」で腕を奮っていた白鳥氏。フランス料理を知悉している新シェフが本格的フランス料理をどのようにしてブッフェに組み込んでいくのであろうか。今後ますます期待したいバイキング発祥店である。
グラスコート 京王プラザホテル
「食材に頼るだけではなく、料理の見せ方や味付け、ブッフェ台のレイアウトを工夫する」佐藤伸裕シェフ
- 金属質でシャープなイメージが合うとアクリルプレートで装飾
2003年11月1日、京王プラザホテル2階に「スーパーブッフェ グラスコート」がオープンした。前身のブッフェレストラン「シェフハット」はまだまだ盛況であったが、他のホテルに先駆けてリニューアルを施したのだ。この英断の結果、現在では当たり前となったシックでムーディーなホテルブッフェの先鞭をつけることになった。
2013年6月には、京王プラザホテル札幌で腕を奮っていた北海道出身の佐藤伸裕氏が、グラスコート料理長に就任して、新しい動きをみせている。
プレゼンテーションの方向性をはっきりさせる
- 氷をダイナミックに使って鮮度のよさをイメージさせる
「北海道は食材がよいので、美味しいものを提供できる。だが、単に食材に頼るのはよくない。料理の見せ方や味付け、ブッフェ台のレイアウトなどを工夫している」と言う通り、単純に北海道フェアを行うだけではなかった。「グラスコートは木というよりも、金属というイメージ」と、はっきりとしたプレゼンテーションの方向性を見出だし、よりスタイリッシュでシャープな感じに仕上げる。
名物料理を食べ比べ
- 2013年9月にはシャケとホッケの2種類を用意して
食べ比べられるようにしていた
北海道の名物料理である、ちゃんちゃん焼きを、他のブッフェでは見掛けられない手法によって提供した。鮭とホッケの2種類を用意して、食べ比べできるようにしたのだ。フランス料理で、同じ素材を異なる調理方法で提供する「コンパレゾン」という手法がある。お客さまにその素材をより楽しんでもらいたいという気持ちによるものだ。
- 佐藤伸裕シェフ
現代ブッフェのトレンドを創り出したグラスコートは、他のホテルから参考にされるほどのブッフェ店だ。この先進性に決して驕らず、さらに進化させようとしている佐藤氏から目が離せない。
東龍
ブッフェ評論家・グルメジャーナリスト。知識を競う、TVチャンピオン「食べ放題通選手権」で2002年と2007年に優勝。All Aboutの「ブッフェ・食べ放題・バイキング」ガイド。「すみれ草201」(http://www.sumire201.com/)主宰。ブッフェの発展に寄与するべく、テレビや雑誌でも活動中。
- 東龍