2013/5/10

世界一安全で美味しい食材は
日本から生まれる!

ファーム・アライアンス・マネジメント 代表取締役 松本武さん

松本武さん
松本武さん

大学卒業後、医薬品部門の元営業マンとして活躍していたが、熊本で大規模農園「松本農園」を営んでいた実家にUターン。まったくゼロからの人生スタートで、何もかも忘れて畑での農作業に打ち込んだ。その後、さまざまな農業を取り巻く環境に疑問を感じ、ファーム・アライアンス・マネジメントを設立。

新しい日本農業の形が見えてきた。

ファーム・アライアンス・マネジメントは、国際的に戦える農業者を育成し、それをフランチャイズ化する新しい農業ベンチャーで、その「農業IT戦略」が今世界的な注目を浴びている。メンバーである全ての農業生産者の生産情報をインターネットでいつでもどこからでも確認できるように公開しているものだ。しかも「グローバルギャップ」という最も権威ある食の安全を認証する国際規格を取得して、すべての生産物に標準導入し、厳格な安全基準を課している。

その「グローバルギャップ」からは、2012年、徹底した情報開示や、ITを駆使した生産管理システムなどが高く評価され、世界の生産組織の中から、日本で唯一「グローバルギャップ・アワード」を受賞。同社の「農業戦略」には、日本の農業再生の期待が寄せられるとともに、日本経団連関連会社など食とは関係ない大手企業関係者などが連日視察に訪れているという。

最近よく見る農業の六次産業化って、
シェフの皆さんにとって迷惑ではありませんか?

六次産業化という意味には諸説があって一概には言えませんが、一般的には、生産だけやっていてはだめ。加工など二次産業から販売やサービスの三次産業まで一貫して自分たちでやろうというものですよね。でも、僕らの考え方は違います。今やるべきことは、加工とか販売とか慣れないところに手を出そうとする前に、農業が立派な産業として成り立つようにすることが先じゃないかって。農家としての本領を発揮しようじゃないかってことですよ。農家は農産物を作る、安全で美味しいものを作って、適正な値段で買っていただく。そこに本来帰着していくべきだろう、と。

だって、シェフの皆さんが求めているのは、お客様に喜んでいただける安全で美味しく、見た目にも美しい食材じゃないですか?

それを、農家が、本来は素材で勝負しなければならないところに加工して、シェフの手の入れる場所がなくなるような状態で、付加価値がいっぱいくっついてきて、素材本来の値段が見えないようにして、持ってこられても困っちゃいますよね。

農家のやる気をなくし、消費者の目をごまかしている「ブランド」という言葉。

今は、どこもかしこもブランドだブランドだって叫んでる。実際、我々熊本の人参はどんなに努力しても、市場では長崎の人参の価格はもらえない。なぜかって「長崎人参」はブランドだからですよ。ブランドって、いったい何ですか? 一生懸命勉強して頭が良くなっても、あなたは出身が熊本だから東大には入れません、って言われているようなもんですよ。競争が生まれない。努力する意味もない。

それならば、我々は、消費者の皆様に直接我々の努力を見ていただこう。ブランドとか意味不明な言葉で選ぶのでなく、直接見てもらって、我々の商品のすばらしさをわかっていただいて、お客様に直接選んでいただける仕組みを作ろうと、ファーム・アライアンス・マネジメントを設立して同志とともに活動を開始した訳です。

使用している肥料や農薬の分量から出荷状況に至るまでをすべてインターネットを通じて公表し、誰でもどこからでも見られるようにしました。また、畑の位置情報や写真でその状況も見ることができます。現地に行って実際に目で確かめることにできるだけ近づけようって。


商品ラベルにある商品コードを入れるだけで、あらゆる生産情報を見ることができることはもちろん、生産現場を実際に見ることができる。
http://hatake-go.com/

グローバルギャップという国際化の流れ。

すでに国際化の流れがきているということで、これに対処しなければ、日本の農業は生き残っていけないと思います。

安全基準の世界標準化をすると、我々生産者側はマーケットが世界に広がり、買う側も世界から調達ができる。だからそこに共通のルールを作りましょうと。それが「グローバルギャップ」という考え方なわけです。ファーム・アライアンス・メンバーの作るすべての生産物にはこの世界で通用するグローバルギャップの認証がついています。

TPPには農家が反対していると思うでしょうが、違うんですよ。

TPP問題は、実は、何を怖がっているかというと、今の農業のあり方が崩れてしまい、日本の農家がみんなつぶれるというんですよ。ところがですね、TPPやらなくても10年後には放っておけば日本の農家みんなつぶれていますから。だって、高齢化して後継者もいなくなっているんですから。10年間という物差しを当てた時、いくら踏ん張っても結局結論は同じなんですよ。だったら、今から国際戦略をしっかりたてて、競争力もつけておかなくちゃならないと思うんです。

日本の農産物は、世界中で「安全」「美味しい」「きれい」と高く評価されて、すでに圧倒的な競争力をもっているのですから、世界に撃って出るべきですよね。それなら、なおさら周辺環境を整えておくべきですね。

今後は、シェフの皆様にもいろいろ知恵をお借りしながら、さらに元気な日本の農業を目指したいと思います。


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