2012/7/20
渡辺シェフの料理魔術
「シャトーレストラン・ジョエル・ロブション」
エグゼクティブ シェフ 渡辺雄一郎氏
恵比寿ガーデンプレイス内にある三ツ星レストラン「シャトーレストラン・ジョエル・ロブション」。きょうは、エグゼクティブ シェフ 渡辺雄一郎氏が、見るも豪華な特別メニューで応えてくれた。果たしてどんな交流の輪が広がるのだろうか……。
本日お集まりいただいた皆さん
- 今回お集まりいただいた皆さんの写真
写真:左から
ANAインターコンチネンタルホテル東京 ピエール・ガニェールスーシェフ 大塚哲郎さん、内田徹平さん
ロイヤルパーク 洋食調理部 鈴木悠美さん
シャトーレストラン・ジョエル・ロブション 渡辺雄一郎エグゼクティブ・シェフ
レストラン リバージュ 調理 高木倫子さん
ロイヤルホールヨコハマ 調理部 洋食課 小野康隆さん、守屋恵一郎さん
アルカディア市ヶ谷(私学会館)営業事業部 洋食調理課 麦沢京介さん
早速ですが、麦沢さんは南極に行かれたことがあると聞きました。
- 対談
麦沢 はい。2008年~2010年の第50次日本南極地域観測隊越冬隊に参加してマイナス40度の世界を体験して来ました。勤務先の虎ノ門パストラルが閉館するタイミングで応募したんです。
高木 食材って自分たちで釣るんですか?
麦沢 (笑)。オーストラリアまで飛行機で行き、自衛隊の「しらせ」に乗るんですが、その時に1年3カ月分の食材を冷凍で持って行くんです。野菜は基地で育てるものもありました。28人分の三食の他、隊員の誕生日を祝ったりパーティをする時の料理や大工さんに作ってもらったバーカウンターではつまみも出していました。みんなで同じ食卓を囲んでワイワイ食べるのは修学旅行みたいで楽しかったです。また行きたいですね。
隊員の方々にとっては食事が娯楽だったんじゃないですか?
麦沢 吹雪くと外に出られないですし、一日真っ暗な極夜だと気が滅入るので、最高級牛肉で牛丼を作ったり、1キロもあるハンバーグを作って、気分を盛り上げました。
すごいですね(笑)!大塚さんはフランスに行かれていたとか?
大塚 昨年6月まで1年間ブルターニュ地方の「パトリック・ジョフロワ」で働きました。肉と魚を担当していたんですが、日本人は技術的にレベルが高く、繊細だし、魚を卸すのは負けない。その代わり、盛り付けでは日本人が絶対出来ないことをフランス人は平気でします。基本的にみんな俺が俺がという感じでしたが、優しかったですよ。
高木さんはなぜ料理人になったのですか?
高木 私は大学でフランス文化を学んでいて、大学の休みを利用して2カ月間パリに行きました。今思えば母が料理が好きな人で、賑やかな台所にいるのが好きでした。きれいなものが好きなので、フランスの色鮮やかなところや芸術の国であることも一番自分の肌に合うなと思って、26歳の時から料理の道に進みました。
鈴木さんはいかがですか?
鈴木 私は体を動かす仕事がしたいと思って。初めはパティシエを目指していました。今年5年目ですが、最近ようやくこの道で頑張っていこうと思えるようになりました。今の上司の村上秀行シェフは料理はもちろん、人間的にも豊かで尊敬できる方なので、いつか右腕になれるように頑張りたいと思っています。
右腕ではなく、是非シェフになってください!
ロイヤルホールのお2人はどんな毎日ですか?
- 厨房内
小野 婚礼がメインで、オードブルを担当しています。レストランの仕事もあり、日々走り回っています。
守屋 私も、当面の目標は今の仕事を頑張ることですね。働いていると、自分の未熟さを思い知らされます。
夢を聞かせてください。
内田 高校時代から5年間アメリカにいて、TheCulinary Institute of America (CIA)に通っていました。世界的に有名な人の近くで仕事がしたいと思って初めは和食の森本正治さんのフィラデルフィアの店に勤めたんですが、22歳の時にテレビでピエール・ガニェールシェフを見て、自分で店を出す前に、「この人の店で働きたい!」と思い、青山店オープンの時から勤めています。年に3回来日すると必ず厨房に立たれるんですが、天才ですね。こういう方には、人生を通じてなかなか会うことができないと思います。将来は店を出したいと思っていますが、場所は自由が丘でも、海外でもいいかなと思っています。
高木 私は33歳で店を持ちたいです。前職場のラ・ターブル・ド・コンマで小峰敏宏シェフから教えられたのは良い食材をいかにしてもっと良い食材に仕上げるかということ。今は磯山久夫シェフからソースの技術を学んでいます。
この中から、大物が出そうな匂いがプンプンしますね! 是非、店を出した時には教えてくださいね。
本日いただいた料理(一部)
- クレーム・ダンジュ苺のソルベとレモンのクリーム添え
- 和牛ホホ肉エビスビールでブレゼ
- 山口県萩直送甘鯛うろこ付きで香ばしく焼いた
- 春キャベツと新タマネギのプレッセ大粒マスタードとアンチョビの風味
それでは、渡辺シェフから一言お願いします。
渡辺 19歳からずっと食べ歩きノートをつけています。師事したシェフの料理についても私ならこうするというのをずっと書き留めてきました。今読み返すと生意気なことも書いていますが、その時の感性ですからそれでいいんです。20歳から30歳まではたくさん失敗して恥をかきましょう。失敗しすぎはダメですけれど、料理人は失敗から学ぶことが多いのですから。日々を無駄にしないでほしい。
料理は一番大事な愛情表現だと思います。忙しくなって厨房の雰囲気がピリピリした時、「大切な人に最初に作った一皿を思い出しなさい」と言います。それが料理人の原点だからです。あとは、忙しい中でもストイックすぎるのは望みません。レストランはお客さまに楽しんで頂くところですから、私たちも楽しく作りたいです。一番大事にしているのはチームワークですね。
職人は地道にやるしかありません。経験は味に出ます。独立のチャンスを早くに得た方はいいとは思うのですが、彫刻の職人とか絵描きさんでも地道に経験を重ねていくと、自分自身の自信にもなるでしょうし。ある程度の経験を経て独立した方がいいと私は思います。
ジョエル・ロブション氏の世界を再現するのが私たちのミッションですが、ものを創る側として、ロブション氏の記憶に残る料理人になりたいというのが、私たちの考え方です。世界中にロブション氏の名前が付いた店がたくさんありますが、「日本チームは元気があって、いい顔で仕事していて、一番いいね」と言われたい、チームを世界でトップレベルにしたいといつも思っています。
何百回とロブション氏の料理を作っているけれど、久しぶりに作る料理には臆病になります。できたから終わり、じゃなくて常に100点以上を目指してください。お客さまが喜んでくださっても、それで満足したら進歩はありません。一生勉強です。
今日は夢のようなお料理と時間を頂きましてあり
がとうございます。
取材協力:
シャトーレストラン・ジョエル・ロブション
東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内
TEL:03-5424-1347