2018/9/10

東京ステーションホテル

100年以上の歴史を持つ東京駅丸の内駅舎、その中にあるホテルは圧倒的な利便性を誇る。部屋数全150室と規模は決して大きくないが、東京で初めて「スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド」に迎えられ、独立系で小規模ながらユニークでオンリーワンの価値を持つ高級ホテルとしても、世界的に認められている

総料理長 石原雅弘
総料理長 石原雅弘

総料理長 石原雅弘
1988年ホテルエドモント(現ホテルメトロポリタン エドモント)入社。1999年同ホテルのフレンチレストラン「フォーグレイン」の料理長に就任。2007年に渡仏、オーヴェルニュ地方のミシュラン3つ星レストラン「レジス・エ・ジャック・マルコン」、ザヴォア地方のミシュラン2つ星レストラン「ル・シャビシュー」で修行を積む。2008年には「北海道洞爺湖サミット」晩餐会に中村勝宏シェフの指揮のもと料理スタッフとして参加。2011年から現在まで、東京ステーションホテルで総料理長を務める。

唯一無二の料理を

料理人として、この場所が国の重要文化財であるということを意識したと言う石原雅弘総料理長。フランス料理を中心にしつつ、日本食材を積極的に取り入れている。「沖縄から北海道まで、日本の良いものを使いたいと思いました。例えば九州の魚クエ、四国からはカツオやユズ、山陰では鳥取のモサエビなど。魅力的な日本の素材が、東京に集まってくる。それらからインスピレーションを得て、ここにしかない味わいを作り出したい」。身体に良いかどうかにもこだわり、全直営店の料理コンセプト、メニューを考案している。連泊も多いため、朝食は約110種類を揃える。海外からの訪問客は4割程度、国内客は意外なことに東京都在住の人が最も多い。「東京にいながら旅行をするようにくつろげ、心地良いステイを提供できている」からこそだ。リニューアルした2012年ごろは、奇しくも外資・国内著名ホテルが相次いでオープンしたが、「精神誠意で出迎えること、お客さまに共感するおもてなしを、全てのスタッフが心がけています」と言うように、心を感じられる居心地の良さが高く評価されている。「歴史ある場所なので、50年前に結婚式を挙げたというお客さまが戻ってこられることもあります。最近では30~40代も目立ちますが、ファミリー層、ご年配の方、接待利用の役員の方など、幅広い客層が特徴です」。

育成に関しては、各世代、各ポジションを明確なビジョンで導く。「20代前半には、1日1つ仕事を覚えるように伝えます。1年で約280個、10年だと約2800個になるわけですから。30代になると、自分のことだけでなくその場の管理ができるように、どんなタイミングでお客さまに出すべきか、無駄の省き方、コミュニケーションの取り方を。40代はシェフクラスなので、チームの戦力を把握して、イレギュラーな場面にも対応できる能力が身につくよう指導します」。それぞれに役割は違う。先輩の活躍を見せることで、若いスタッフも到達が早くなると言う。セクションもこまめに変える。「一つの場所にしばってしまうのは会社の都合ともいえます。なぜこんなことをしているんだ? と思わずに、経験を積んでいって欲しい」。もし辞めたいと言うスタッフがいたら、続けるのと辞めるのと、本人にとってどちらが本当に幸せかを見極めようとする。そのために、就職しようとしているレストランに一緒に行ってみることもある。親身な向き合い方は、石原総料理長ならではだ。

Restaurant Blanc Rouge
Restaurant Blanc Rouge
The Atrium
The Atrium
The Lobby Lounge
The Lobby Lounge
Bar & Cafe Camellia
Bar & Cafe Camellia

総料理長になって6年、「お客さまに寄り添う料理」というこのホテルの色を確立した。これからはその色を壊さず、しかし彩りを加えるために、後進により積極的に活躍の場を与えていくことが重要だと考えている。多くのスタッフの活躍が、歴史として受け継がれていく。

「料理の前に、生産者がいて食材があり、それを運んでくれる業者の方がいる。その人たちの苦労を認識し、感謝を持って接して欲しい。現場を見れば、葉っぱ一枚無駄にはできないという思いが強まります」。まなざしはゲストだけでなくホテルを取り巻く関係各所全てに向けられ、そのやさしさ、あたたかさが、このホテルの料理を特別なものにしている。

Bar Oak
Bar Oak

東京ステーションホテル
東京都千代田区丸の内1-9-1
TEL:03-5220-1111
URL:www.tokyostationhotel.jp


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