2013/9/20
日本とタイの料理界発展に向けて
日本・タイシェフズ友好の夕べ
いまや、日本国内に1000軒を超えるといわれるタイ料理店。消費者の間にタイ料理は確実に浸透し、タイ王国大使館が毎年東京で開催している「タイ・フェスティバル」には、30万人を超える動員数を誇るなど、根強い人気を裏付けている。タイにおける日本食人気も年々高まり、タイ国内での日本料理店の数は1000軒以上にのぼるという。その一方で、日本料理を提供できる人材や、日本食材を提供できる企業は数が限られており、急速に発展するタイへの日本料理関連の進出を期待する声があがっている。
そんななか、日本とタイにおける両料理界の発展とシェフ同士の友好をはかるべく、2012年に「日本・タイシェフズ協会(JTCA)」が発足した。会長には、日本タイ友好議員連盟会長であり、衆議院議員である塩崎恭久氏が就任。代表理事には、日本におけるタイ料理界のトップシェフたちが就任し、参加会員や企業とともに、日本とタイにおける人的交流や情報・技術の交換を行っている。
このJTCA設立を記念して、2013年2月25日(月)東京・芝浦のインターコンチネンタル東京ベイホテルを会場に「日本・タイシェフズ友好の夕べ」と冠した交流パーティーが開催された。当日、会場にはタイ料理レストランやタイ産ドリンク、日本料理店などのブースがずらりと並んだほか、特設ステージには、タイの伝統技術であるフルーツカービングがデコレーションされ、多くのゲストたちを出迎えた。
ここで、パーティーで提供された料理とともに、タイ料理の魅力について紹介しよう。
ビュッフェテーブルには、タイカレー、トムヤムクン、タイ風ラーメン、パッタイといった日本でもおなじみのタイ料理に加え、タイ風ソーセージやさつま揚げといった、タイで人気ある屋台メニューも並んだ。そのなかでも、インターコンチネンタル東京ベイホテルエスニック料理担当シェフのサナンコン・ピチェット氏のおすすめは「クンシェー・ナンプラー」とのこと。これは、生の天使エビをニンニク、レモン、砂糖、ナンプラーでマリネしたもので、ハーブやスパイスとともに「甘・辛・酸」の味わいを楽しめるという、タイ料理の特長が凝縮された一品ともいえる。
料理だけでなくドリンクも、タイ産の製品が多数並んだ。タイを代表するビールとしておなじみの「シンハー」のほか、タイ産ワイン「モンスーンバレー」や美容ドリンクの「サッペ・ビューティードリンク」といった、日本では知られざる人気ドリンクブランドも登場。ゲストからは「タイ料理のスパイシーな味わいにぴったり」と評判も上々だった。
さらに、カクテルブースには、かつお節風味のウォッカをベースにした「ブラッディ・ボニート」、パッションフルーツやクランベリージュースを加えてトロピカルに仕立てた「アールグレイ・カーボポリタン」、カルーアベースのデザートカクテルにオークの香りを閉じ込めた「スモークド・アレキサンダー・ピガール風」など、日本とタイにインスピレーションを得て作られたというメニューで、ゲストの舌を愉しませていた。
ところで、今なぜ日本とタイの料理界の発展が望まれるのか、その理由について、JTCA設立に尽力したタイ料理レストラン「チャイヤイ」オーナーシェフの坂本広氏に聞いた。
「タイ料理は、スパイスやハーブを使って香り豊かに仕上げることが一番の魅力です。一方で、おもてなしに欠かせないタイのフルーツカービングは、各国料理のデコレーションに応用できるため、技術を学ぶ日本人シェフは年々増えています。そういったきっかけからでも、多くの方々にタイ料理をより深く知っていただき、味わい方の幅を広げていただきたいと考えています。既存の料理をタイ風に仕上げたり、ホテルのビュッフェにタイ風メニューをプラスしたりと、変化を持たせることでお客様にも楽しんでいただけるのではないでしょうか」
タイシェフズ協会のジャムノン会長もまた、タイ料理界のトップとしての立場から、日本料理界と交流する重要性を次のように語ってくれた。
「タイの若い人たちの間で日本のファッションはとても人気があるように、若いタイ人シェフたちの間で日本料理は人気があり、学ぶ人は増えてきています。しかし、タイ国内では残念ながら日本人シェフが少なく、調達できる食材が限られているため、本格的な日本料理を学べないまま、見よう見まねの日本料理を提供している場所も少なくありません。今後、日本料理の真の技術を学べる場を増やすことで、日本料理とタイ料理のエッセンスが組み合わさったオリジナルメニューなど、新しい味わいも増えてくるかもしれません。日本のシェフの方々にもタイに来ていただき、自分の舌で味わって、自分流の料理に取り込んでいただきたいです」
ジャムノン会長をはじめ、タイシェフズ協会は今後JTCAの活動を意欲的にサポートしていく予定だということで、日本とタイ双方の交流活性化が見逃せなくなりそうだ。
(レポート 浅川淑子)