2016/9/20

野菜と豆料理のスパイス使い

インド・スパイス編

スパイスとハーブの違いは?

明確な違いはないが、スパイスは種の部分を乾燥させたものやそれを粉末状にしたもの。ハーブは葉っぱや茎の部分、乾燥されていたり、生だったりする。
スパイスを一つの定義でまとめるのは非常に難しい。着色、アロマ、刺激的な香と味、料理などに味付けをするもの。キャンディー、香水、コスメ、医薬品、そしてもちろん料理にも使われている。いずれにせよ、人々の嗜好や食欲を楽しませてきた南の国からの贈り物と言ってもいいのかもしれない。北ヨーロッパやアメリカをはじめ、現在では世界中の飲料や食べ物に取り入れられている。

ホールとパウダーの違いは?

ホールは、スパイスの原型を乾かしたもので、クミンシード、コリアンダーシード、ローリエ、唐辛子など。それらを粉末にしたものがパウダースパイスとなる。もとは同じスパイスだが、使い方は違う。
・ホールのスパイスは下地作り。
・パウダースパイスは香り&風味作り。
このために、入れるタイミングや用途も異なる。どちらかだけでなく、両方常備して使い分けたい。

スパイスの分類と様々なブレンド

メタ・バラッツ氏曰く「スパイスをブレンドすることはアートであり化学でもある。誰のために、何のために作るかでそのブレンドは変わってくる」。

講師紹介

メタ・バラッツ
メタ・バラッツ

1984年、鎌倉生まれ。南インド・ニルギリの高校を卒業し、スイス・ジュネーブのCollege du Lemanにてケンブリッジ大学のA Levelを獲得。その後、スペインに留学して経営学と料理を学び、帰国。1954年西インドで父が創業したアナン株式会社にて、新商品開発やネーミング、新規事業の改革などに携わる。北インド・グジャラート出身である父アナン・メタのもとで、アーユルヴェーダを基にした料理を実践している。1958年に家族で訪日したのがきっかけで移住。現在は、旬の野菜をテーマにしたカフェ「移動チャイ屋」を立ち上げ、出張料理を精力的に展開中。また、2011年震災後より宮城県女川町に仲間たちと炊き出しに赴いたのをきっかけに現地の雇用、観光資源創出に向け「女川カレーProject」を仲間とともに始める。

代表的なスパイスの分類

辛いスパイス(全体の3%) ペッパー、西洋わさび、マスタードなど
刺激的なスパイスとハーブ(全体の5%) カルダモン、クミン、スターアニス(八角)、ディル、タイム、ガーリック、ジンジャーなど
ピリッとくるスパイス、香りの強いハーブ(全体の12%) ケイパー、カレーリーフ、バジル、ミント、レモングラスなど
甘いスパイス、程よい香りのハーブ(全体の23%) シナモン、アニスシード、チャイブ、ベルガモット、チコリ、ルッコラ、バニラなど
混ぜやすいスパイス、マイルドなハーブ(全体の約57%) チャービル、ゴマ、パプリカ、コリアンダー、ターメリックなど

パンチフォロン

東インド地方の豆や野菜、魚料理に合う5つのミックススパイスの組合せ。それぞれの効能とは?

フェネグリーク
1、代謝調節
2、粘滑
3、滋養強壮作用 など

フェネグリークはインド、中近東では豆類として食用され、ベジタリアンの貴重なタンパク源にも。種子以外の部分もインドでは葉をイモ類などといっしょに調理して食べる。また、種子を植木鉢に蒔いてアルファルファなどのように発芽させたものをサラダに利用することもできる。タンパク質やビタミン・ミネラルが豊富なスパイス。

マスタード
1、代謝を促す
2、脂肪燃焼システムに働きかけ、脂肪を燃焼させる
3、肝臓の重金属の排出促進 など

カロンジ(ブラッククミン)
1、鎮痛作用(痛み止め)
2、抗菌作用
3、抗炎作用 など

フェンネル
1、健胃、去痰(たん)作用、嘔吐回復、腹痛回復カ
2、消化促進、消臭、解毒作用による下痢や腹痛への効果
3、お口直し、リラックス効果 など

フェンネルは、ういきょう、フヌイユ、ソンフとも呼ばれる。カレーに入れる場合「アネトール」という成分が肉の脂肪分を分解し、消化を助けるため女性には嬉しいスパイス。若い葉および種子(フェンネルシード)は甘い香りと苦味が特徴的で、食用、薬用、化粧品用などに古くから用いられている。中国では五香粉の原料とされる。

クミン
1、防腐効果
2、消臭効果
3、下痢やお腹の張りへの効果 など

クミンは、世界でも愛されているスパイスで、羊肉で作ったメルケーズソーセージ、クスクス料理、トルコでは挽肉料理、野菜料理、サラダやピクルス、薬味としても使われ、インドでは使う前に煎って香りを引き立ててから使うことも。コリアンダーと相性が良いといわれている。アメリカのテキサスではチリコンカンにも使われる。

最後に…

・スパイスの組合せには、アーユルベーダの智慧がベースにあり、素材と消化を助けるものが必ず組み合わされている。基本的な料理のレシピをベースにすると良い。
・味を決めるのは塩。 スパイスは風味、香。よって保存状態が重要。

参加者レポート

私はパティシエですが、お酒が苦手なお客様が多いので、お酒の代わりにスパイスで深みを持たせられないかと思い参加しました。
普段何気なく使っているスパイス。それ自体に味はなく、刺激や風味といった脇役的に捉えていて、むしろ何に使われているかをあまり意識せずに食事や調理に携わっていました。パティシエでもシナモンやスターアニスなどはスパイスとして使っていることは知っていましたが、バニラやミントなどもスパイスの仲間であることを知りました。

講習会ではスパイス使いの際のオイルの種類、スパイスの焙煎時間、パウダーやホールで風味や深みの違いなどが出ること、チョコレートと合わせてみるととても相性が良いということも教わりました。受講後も自分自身でも調べて相性が良い組み合わせを考え、今新メニューの研究をしている最中です。次のスパイスの講習会も楽しみにしています。

日本ホテル株式会社 東京ステーションホテル
調理部ペストリー 山崎 真由


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