2016/3/10
ウェスティンホテル東京
- ロビー
1994年創業。
日本を代表するヨーロピアンエレガンススタイルのホテルとして20年以上を経た今も、変わらないラグジュアリーを宿して佇む。建物の重厚な造りはスタッフのマインドにも大きく影響しクオリティの高いサービス、クオリティの高い料理は長年に渡り高い評価を受けている。
「料理はおいしくて当たり前。最高なものを出せる環境は整っているからチームをリードして、より良いものを提供していきたい」。開業からホテルを見守りシェフたちを牽引してきた沼尻寿夫総料理長の思いが溢れる。
- 沼尻 寿夫
総料理長 沼尻 寿夫
1982年より箱根宮ノ下冨士屋ホテルにて調理の世界に入る。その後ホテル西洋銀座のオープニングを経て、1998年ロイヤルパークホテルのフレンチレストラン「パラッツオ」へ。1994年よりウェスティンホテル東京のシェフとなり、宴会料理長、副総料理長に就任。2004年より総料理長となる。2010年にはフランス共和国 農事功労賞 オフィシエを受賞。
作りたいものを作ってもらうために
和洋中すべてのレストランが直営のため「コミュニケーションを取ることが非常に重要です」と語る沼尻寿夫総料理長。シェフのモチベーションを保ち、上げていくために、それぞれがどんなことをしたいかを組み上げ、ゴールを見つけて導いていく。「すべてのレストランの味見をし、マーケティングやサービススタッフの意見も求めます。ホテルに合うかどうかは十二分に加味した上で、料理人にはやりたいこと、作りたいものを作ってもらいたいと思っています。やる気で料理は全く違ってきますから。自分が「やっている感」を感じて欲しいのです」。
例えばインターナショナルブッフェレストラン「ザ・テラス」には、人材、機材を揃え、鈴木一夫エグゼクティブペストリーシェフが作りたい味を作ってもらえる環境を整えた。ビジネス戦略としても重要な要素となったこのレストランのデザートを、沼尻総料理長自身も「ぶっちぎりに美味しい」と絶賛する。
- インターナショナルブッフェレストラン「ザ・テラス」
- 鉄板焼「恵比寿」
守るべきもの、変わるべきことを見極める
「料理を作る上で大切にしているのは、いかに美味しいものを作るか、それから安全性です。素材を見て、産地を確認し、納入企業さまや購買セクションともコミュニケーションを取っています。また清潔な調理場、スタッフの健康管理など、調理環境も重要です。もし事故があったら、美味しいかどうかなど言っていられなくなりますから」。それでも、やはり料理は味に尽きると力説する。「絶えず考えて、アイデアを探します。昨日はこうしたけれども、今日はこうしてみようか?と」。常により良い素材を求め、気になったものは産地を訪れて確認する。
「鉄板焼 恵比寿」で提供される「恵比寿牛」は、鹿児島の生産者を訪ねて、赤身も脂身も美味しく、自分が納得できるものをつきつめた結果だ。玉子も米も、美味しい素材に出会ったらすぐに動いて取り入れる。
そして、これからも成長していくために、10年、20年と守るべきもの、変わるべきことを間違えないことが重要だと語った。例えば、アクを取るという作業は、これからも変わることはない。一方で、「同じような素材で、同じように作っても同じ料理にはなりません。それは10年前と素材が大きく変わっているからです。今のニンジンは生でも食べられますが、昔はそうではなかった。肉にしても、赤ワインでマリネするのは臭みを取るためですが、今の肉は臭みがない。魚も同様です。それなのになぜ変わらずに臭みを取るのか。水も全く違います。そのことをいつも心に留めておかなくてはならないと思います。なぜアクを取るのか、なぜ焼くのか。一つ一つの物事の意味を押さえておかないと、10年後に間違ったものを作ってしまうことになるでしょう」。