2013/2/8

ギリシャのお菓子

ギリシャ食のリポート

「チョコレート好きなら、これは夢のケーキよ! 私のお気に入りなの!」とウエートレスさんに推されて食後に注文したデザート。おいしくて、サービスも素敵なレストランでのこと。「夢のケーキ」への期待は高まります。さて、ワクワクしながらフォークで頂こうとすると、あら? このケーキはカチンコチン。むむむ、と頑張って一口分を切り出し、口に運ぶと「!?☆%!!」。

甘さが脳天を突き抜ける、という初めての体験。感知できる甘さの上限を大幅に振り切り、私の脳は危険信号を発します。このチョコレートケーキ、甘さがせめて5分の1だったら、おいしく食べられたでしょうに……甘すぎてチョコの味がわからないくらい。夢が破れた瞬間でした。

それからというもの、ギリシャのスウィーツは避けがちになりました。北アフリカやトルコにも見られるバクラヴァなどの、伝統的なギリシャのお菓子は、見た目からして蜂蜜がたっぷりかかっているので甘いと予想がつきます。またトルコにも見られるモザイクケーキは、今までの経験上、なぜか割と耐えられる甘さだったりします。しかし、見た目は綺麗でおいしそうな洋風のケーキは、想像以上に甘すぎる可能性大です。

バクラヴァ
バクラヴァ
モザイクケーキ
モザイクケーキ

しかし、ギリシャのお菓子は甘すぎるものばかりでもない、ということを最近学びました。

ギリシャのクリスマスのクッキーとして定番のアーモンドクッキー「クラビエデス」。小麦粉、バター、卵、アーモンド、砂糖で作るシンプルで美味しいクッキー。食べるとほろっと崩れるのですが、意外にも甘すぎずにあっさりしています。日本人が食べてもどこか懐かしいお味。作るのも簡単なので、クリスマス用にたくさん作ろうと思います。クラビエデスは、三日月型かコロンと丸い型が定番なようです。粉砂糖でお化粧したクッキーは、見た目にもクリスマス気分を盛り上げてくれるでしょう。

サンタクロースの由来は、聖ニコラオスが有名ですが、ここギリシャでは聖バシリオスがサンタです。赤い衣装に白いお髭、ではなく、聖バシリオスは色黒、痩せ型、黒髪のギリシャの司祭でした。いろいろな説がありますが、ギリシャの友人から聞くところによると、バシリオスには「王」という意味もあり、王様が敵を驚かす作戦として、民から金や宝石を集め、敵がまんまと退散するのを見ると、今度は集めた品を、どうやってそれぞれの持ち主に返そうかと悩んだそう。持ち主を特定するのは難しく、金や宝石をパンに練りこんで焼き、民に配ったとか。それがバシロピタ(王様/聖バシリオスのパン)の始まりだそうです。聖バシリオスの命日は1月1日。ギリシャではサンタクロースが来るのはクリスマスではなく、1月1日のお正月なのです。

日本が細く長く、とお蕎麦を啜っている頃、ギリシャでは聖バシリオスに因んだこの「バシロピタ」を食べて年越しをします。こちらもとてもシンプルな菓子パン。地域によって肉入りバージョンもあるようですが、基本的な材料は小麦粉、バター、卵、砂糖、ベーキングパウダー、牛乳、レモンの皮と塩少々。そして、アルミホイルに包んだコインです。これらを混ぜてオーブンで焼くと出来上がり。これを伝統に則って順番に切り分け、コインが当たった人は幸運な新年になると言われています。「大吉」が1つだけ入ったおみくじのようですね。

青木 瑠衣子(あおき るいこ)
メーカーの海外営業でタイ・ベトナム・中国の担当を経て、出張のない商社の派遣勤務に転身。同時にベリーダンス講師としてレストランショーとお教室を展開。縁あって、現在ギリシャ・クレタ島在住。趣味は踊りと読書。


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