2015/6/19

INからREIへ 名古屋栄東急ホテル

会員レポ 「シェフの休日」反町政広(千代田支部)

改めまして、ご挨拶申し上げます。 4月より名古屋 栄 東急INNから名古屋 栄 東急REIホテルへとブランド名称変更を行いました。東急 ホテルズブランドの上質な価値や個性が明確となり、国内外のお客様により幅広くより身近にご利用頂けるものと考え、今後一層の努力をしてまいる所存でございます。
今後ともよろしくお願いいたします。                                               

気が付けば名古屋に赴任して、はやくもこの4月で丸3年が経ちました。
前任地は、四国・高松。  時の流れがゆったりと感じられ、とても風向明媚なところでした。
とりわけ、食材が豊富で、とくに魚、そう、瀬戸内の魚貝類が最高でした。 その当時にも、たいへんお粗末でございましたが、小豆島や瀬戸内地域の食材や、食文化をご紹介させて頂いた事がございました。          
そうそう、 ん~~あの香りと味が蘇ってまいりました!!   懐かしいかぎりです・・・・・。

おっと今回は、名古屋でのお話です。 名古屋と言えばなごやめし。代表的なものはひつまぶし、味噌カツ、きしめん、手羽先、味噌煮込みうどん、土手煮にあんかけスパゲッティ、イタリアンスパ?等々、限りありません。味と旨味がぶつかり合う和食ベースの濃厚で安くて速く簡単に食せるファストフード的な1品料理がたいへんもてはやされている土地柄です。 日本の大首都圏、東京と大阪に挟まれた中間都市名古屋。このような狭間の中で、独自に進化してきた個性ある食文化圏であり、そのド真ん中で 『フランス料理への理解を深めて行くことや、いただけることがより、どこまで出来るのか?』 が、赴任当初から感じ取った課題でした。

思い立ったらすぐ行動!! 休日や暇を見付けては、趣味でもある美味いもの食材探し!!
あるある!! 良いもの 好い仕事がたくさんありますね~!さすが、伝統が生きるものづくりの町、名古屋です。
これだけ揃えばやはり結(ケツ)の答えは、こだわりの 『地産地消』 ですね。
そうこうするうち私の気心を惹かせたものが大きく3つありました!!
その(1)つ目は、愛知のやさいたち。 一番最初に目にとまったのが、とりわけ愛知県の伝統野菜、『あいちの伝
統野菜』 。21品目の35品種というもの。
その心は、15年ほど前になりますか、オーガ二ック食品・野菜、有機栽培という言葉が流行り、当時の料理長も取り入れ、私自身もすこしなぞった記憶があります。自然栽培、有機農法とは何ぞや?その栽培方法でできた野菜はからだに優しく、野菜本来の味?美味しいのか?噂通りなのか?半信半疑のまま時だけが過ぎ、忙しさにかまけ依然として野菜の実体がつかめない釈然とした日々が続きました。 そんな中、やはり周りの先輩料理人の方々が、自ら野菜やハーブを作りはじめたのでした。  やはり、手っ取り早くやさい達を理解し、自ら答えを出すにはそれが一番の近道だと痛烈に思いましたね。 ヒルトン、オータニ、パレス、オークラの先輩の皆さんの影響を存分に受けました。その頃の会合や食事会、飲み会ではいつも野菜談議に花が咲き、羨ましい限りでした。『いつか私も栽培しよう』 と心に決めたものでした。そんな夏のある日、突然にチャンス到来!! 町内納涼会の席で農家のおやじさんと話が盛り上がり、ついに畑をお借りすることが出来たのでした。 観様見真似でトライだぜ!!
  初めての収穫時、大根・蕪・長葱・白菜などを家族が見て一言、 『素人にしては、よく出来たじゃない?!』    だって・・・!! おやじは夕日で光る畑の中、生の野菜を一人噛み締め感無量!! 『遂に出来た!!』 と。
そう、始めてもう8年ぐらいになりますが・・・。もちろん、無農薬。化学肥料は使いません。堆肥と油かすだけです。
自称、そり菜園小作人として、なんとか野菜本来の味がほんの少しだけ、垣間見みえて来た様な気がする今日この頃なのです。   そんな訳で目は必然と野菜に向くのでした・・・!。

愛知県は古くから野菜づくりが盛んだそうで、気候も温暖、人柄も温厚? で多くの人々が関わり、経済と文化の
発展とともに全国各地からさまざまな野菜やその種も集まってくるようになりそこで、尾張地域を中心に種や苗を育
てて、農家に売る種苗業者が生まれました。 その後は、知恵と技術を結集し、優れた品種を世に送り出し全国の
野菜づくりに大きく貢献してきたということです。 この地域では、これらの野菜を歴史的・文化的遺産とするだけで
なく、今後、再び身近な野菜として食していこうとするものであります。

☆伝統野菜4つの定義  1、今から50年前には栽培されていたもの。 2、地名、人名がついているものなど愛知県に由来しているもの。 3、今でも種や苗があるもの。 4、種や生産物が手に入るもの。
という4つの定義を満たす35品種なのです。
個別にみれば少々癖のある各々の野菜ですが、昔を思い出させてくれる風味ですよ。やはりまだまだ、生産農家が少なく=生産量の少ないものもあり、当ホテルは特別なご配慮をいただき、地元 大府市の 『げんきの郷』 より入荷・仕入れております。  近年のアウトドアや健康志向、野菜ブームもあり 『げんきの郷』 では、新鮮な地元地域の野菜や魚がふんだんに品揃えされており、『農』 と 『食』 との一大テーマパークとして、大変な人気と脚光を浴びているんです。                    
栄東急REIホテル バンケットウエディングでタイアップさせて頂いており、青空の下 「げんきの郷挙式」 ベジ婚プランと称し、 お料理は、季節の伝統野菜・地元の食材をふんだんに取り入れたメニューをご提案、提供させて頂いております。  また、バンケットでは、日本野菜ソムリエ協会主催での会合や教室においては、こだわりの野菜食材でのメニュー構成とその料理提供をさせていただいております。
また、当ホテルB1・レストランひしや は、日本野菜ソムリエ協会認定レストランであり、こだわりの野菜ソムリエ2名のスタッフが日々活躍し、毎週木曜日限定のランチハーフビュッフェでは、 『あいちの伝統野菜』 と地域食材をテーマとしたメニュー構成でのコーナーを設けたお料理提供で、お客様には大変ご満足いただいております。
そのほかフェアーとして、2ヶ月ごとに日本全国グルメ紀行、日本各地域にスポットをあて、スタッフが各地に赴き、ご当地ならではのグルメな食材を探し出し、ひしや ならではの洋風創作料理を提供しており、任された若手スタッフのモチベーションも上がり、活気あふれるレストランキッチンです。
6月・7月は、 『東北岩手うんめぇもんフェア』 開催中です。
                                                                                                                                                                                                                                                                                     
その(2)つ目は、愛知の食肉と魚貝たち。
やはり、名古屋(愛知県)を代表するダントツの知名度と人気と言えば、皆さんもご存知の 『名古屋コーチン』。
「地鶏の王様」として君臨しています。名古屋コーチンは身も卵もお味が大変濃厚。高級感ある味わいですヨ!!
レストランでは、コーチン・オムライスが人気あります。その他、三河赤鶏なども使用した料理も提供しております。
 次に豚肉ですが、品質と持ち味、値段的にもバランスが取れ、安心できるのが、『愛知みかわ豚』ですね。
脂も甘みがあり、肉質自体も程よく締まり、豚肉本来の旨味を感じることが出来ます。やはり、調理法は、ローストやブレゼで味を引き出します。
 牛肉の知名度と人気は、やはり 『松坂牛』 ?!・・・・・愛知にも、ひけをとらないブランド牛がいます。 『みかわ牛』 なのです。 併せて交雑種(F1)愛知牛や尾張牛。 その美味しさと質の良さの秘密を、当ホテルへ納品していただいている 杉本食肉産業株式会社 舟橋課長、中澤係長がお付き合いのある牧場へ 私共々、暴きに行って参りました!!  (実は、当ホテルと杉本食肉産業株式会社さんとは土地続きのお隣さんどうしなんですネ!)
・・・着きました。 愛知県は名古屋市内からもほど近い、大府市にある有限会社 下村畜産。 
大きな牛舎が立ち並び、その中には黒毛和種がなんと 900頭の 『みかわ牛』。 牛舎や中の区画ごとにキッチリと出荷順と役割分担に分かれています。 気が付けば、牛足にはなんと万歩計!! 歩数が日常のアベレージより上がると発情のサインだそうで、種付け開始。 各牛の情報がリアルタイムで社長のスマートホンへ!! ビックリや!! 飼料もこだわりがあり、もちろん!遺伝子操作されていない国内産の原料を使用した飼料を飼料会社へ独自の配合配分でオーダーした飼料とを、自ら一次発酵させた粗飼料(干し草、稲ワラなどの繊維質)と特別な高級配合飼料とを、毎朝それぞれの牛の体調に合わせブレンドし、与えているんだそうです。
ホンマ、大変な調理や! 重労働やで~~!  牛の内臓器官にストレスを与えない為やて!!        
有限会社 下村畜産 下村 勉 社長いわく、安心で美味しい牛肉を提供するには、 『母牛を抱え、種付けから分娩、哺乳、育成、肥育、精肉加工を一貫生産する事により、牛、一頭一頭を把握し、個々のストリーを理解し、気がかりなく安じてお客様に提供させていただく為、責任をもって弊社は育て上げる』 というものでした。
『みかわ牛』 に対する熱い情熱が美味さのテイストでした。

 目の前はすぐに三河湾があり、太平洋。  ここもいい感じです!
三河湾・伊勢湾は、木曽川、矢作川、豊川など1級河川から豊富な栄養分がもたらされ、河口付近は大きな干潟がつくられ、たくさんの魚介類が生息しています。 やはり恵まれた地形を背景に沿岸漁業が盛んです。
特別目を惹くのが 『大あさり/ウチムラサキ』 でした。地元の名物だそうで、あまりの大きさにビックリ仰天!!
10cmはあろうかという代物。 九十九里のハマグリよりデカイわ~~! 見た目の貝殻の質感はアサリその物。 浜焼きしてる香りは最高ですが、これだけデカイと間抜味だろうと思いをめぐらし、いただきます。
思いとは裏腹にたいへんおいしゅうございました!! ん~。この食感は何かと似てるなぁ~・・・?? ヒントあり!!
それに、おすすめは全国の50%以上を漁獲するアサリ、そして、しゃこ、がざみ、黒鯛です。
また1つ、おいしいヒントを発見しました。   
最後(3)つ目は、尾張・三河の醸造発酵食品たちです。
愛知県は全国でも稀に見る醸造産業の集積地でもあり、和食が世界無形文化遺産に登録され、日本酒、醤油、味噌、酢などの醸造発酵食品の今後の発展が大いに期待されている地域なんですね。
このような時期に赴任して1年ほどが過ぎ、心身共に余裕も少々できた3月に、酒蔵見学にでも行きませんか? 蔵出しなんですよ! 何種類ものお酒の試飲が出来るんですヨ!!と同僚に声かけられて、即、OK!!行きますよ~と!!
名古屋から電車に揺られて40分ほど。 待合わせの可児川駅に降りると なんと無人駅!!そこから、車で15分ほどで到着。 白扇酒造株式会社。 歴史を感じさせる蔵構えです。 ですが、もう、たくさんのお客さんで盛上ってます。 順次中へ入ると試飲の嵐。日本酒、各種焼酎、梅酒に各種味醂。 こりゃすごい!! ものの30分でできあがっちゃった~~?!かな。
やはり、日本酒の朝しぼりの生酒はほんとうに美味です。 もう一つビックリしたのは、味醂自体を飲んでいる事とその奥深い上品で甘美な美味しさです。 これは本当に目からウロコ・・・です。 味醂も3年もの、7年、10年ものとあり、旨さとコクが順に増していくのです。 それと興味を引いたのがドライの麴でした。自分好みの塩こうじなどが自宅で作れるんです。各商品その場で販売もしているので、さっ速購入し、テスト!  やはりこれらの食材は、どことなく、ワインやチーズ、バルサミコなどの影が重なって見えてきます。 おいしいヒントがまた、湧いてきました。
『ん~こりゃ、いけますねェ~! この歴史ある美味しい食材を違和感無く簡素なかたちでフランス料理に取り入れたいな』 と もう一人の自分が囁きました。 もちろん! それからは、地域性を出した、お客様のご満足と笑顔をちょうだい頂ける数々の商品の提供に励む日々であります。
 それからまた1年、味をしめたので、翌年の蔵出しにまた参加。 酒蔵会場は、2月の寒さも吹き飛ばすほどの熱気と賑い。 仲間内でたらふく? 試飲、歓談をしていると何時の間にやら人の良さそなオジサンも加わりお酒と味醂談議。 ム・ム・・・。  やけに詳しいオヤジさんやな~?!!  何者か??!
そうです! この方が、白扇酒造株式会社 社長 加藤 孝明氏でした。 気さくで、誠実感あふれる対応でお話を伺い感謝感銘です。  気付きました!気付きました!!  この酒蔵の商品である 福来純・本みりん(3年)、古々美醂(秘蔵10年)、白美醂(90日)は、作り手の人柄、気持ちや思いが、そのまま表現され、込められている商品だと感じました。 ホントうまいでっせ~! その日も再来を約して、帰途につきました。
 数ヶ月後、来ると言ったら必ず来ます!! 本当に参りました。
今度は、真面目に勉強です。 味醂、酒、醸造発酵に関する化学と歴史の変遷についてと工場見学をさせていただきました。  また1つ、おいしいヒントが湧いてきました。
本当にありがとうございます。  
       
 それにもう1つ忘れてはならないおいしい発酵食品、味噌! 名古屋と言えば、赤味噌 『八丁味噌』。
私などもそうでしたが、赤味噌と言えば 『八丁味噌』 では、大きな間違いです。見た目の色だけではありません。
徳川家康誕生の岡崎城から西へ八丁(約870m)の距離にある八丁村(現在:愛知県岡崎市八帖町)で2軒の味噌蔵が造っていたことから、その地名より 「八丁味噌」 と呼ばれ、以後2軒は商標として 『八丁味噌』 を使い続けているのです。  大豆、塩、水しか使わない独特の製法を守り、大豆の旨みが凝縮した伝統の味を、後世に伝え続けています。この製法でなければ 『八丁味噌』 とは言えないのです。
その内の1軒である 合資会社 八丁味噌 《屋号 カクキュー》。西暦1600年代には味噌の製造を開始しており、2社(軒)は味噌を造る企業として最も古い歴史を持つと言われています。
 名古屋赴任が決った時から、絶対に八丁味噌 工場見学に行くぞ!! と決めてましたね。
ルーツは、もう、25年ほど前、旧キャピトル東急ホテル時代に、キャピトルが建て替え閉館を迎える頃?まで、お隣のビルの蕎麦屋さんに足繁く飲食に通い仕上げには必ず赤出しを頂いてました。たいへん美味しかったのです。
実は、その当時からその不思議な味の正体が知りたかったんですね!
何とも言えないコクのある深い旨味とキレのある酸味なんです。  苦節25年、ついに、この正体を見破ることが出来ました。   ん~~また1つ、おいしいヒントが湧いてきましたネ~。
はてさて、この地域の歴史と人々の知恵とに、共に育まれてきた 『美味しいもの?』 との発見と出会いのヒントの積み重ねをどう? フランス料理に帰結させるか、出来るのか・・・・・?

赴任してから今までのお客様の中には、愛知県産野菜や肉・魚を使用して下さい! 愛知県地産地消メニューでお願いします!など、バンケットではこの様な要望のオーダーが間々あるんです。  また、これまでには、官公庁、県、愛知県国際農友会主催のご宴席等々、あいちの伝統野菜はもちろん愛知県地産地消メニューなど食へのこだわりや食育にからめたご宴席へのお料理提供も行ってきました。 多大に感じるところ、愛知、東海地方の皆さんは、食に対する知識や関心度が非常に高い地域と感じております。   当然、私自身が好きで選んだ仕事(職業)ですから、もっと勉強しなければなりません。   そして今日まだ、締結こそしてませんが、今後のTPP協定の 『食の安心・安全』 『農業』 『食文化』 などが日本の内外や私たちに与える直近の影響を正確に捉え、乗り越える勉強をして行かなければならないと強く思っております。

そして、これからもお客様の笑顔と ご満足をいただきたく 『地域食材の活用』 と 『地産地消』 を目標に切磋琢磨し 『食の安心・安全』 を目指したフランス料理の提供を怠らないよう、努力の毎日であります!!
東海、名古屋地域の活動レポートでした。  お粗末さまでした!!                 2015・05・15

   <プロフィール>

1981年04月              東京ヒルトンホテル入社
1984年01月   ホテル名改称 ⇒ キャピトル東急ホテル
2007年01月              横浜エクセルホテル東急
2008年10月              パンパシフィック 横浜ベイホテル東急
2011年02月              高松東急イン
2012年04月              名古屋 栄 東急イン
2015年04月   ホテル名改称 ⇒ 名古屋 栄 東急REIホテル (現)


八丁味噌 カクキュー
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白扇酒造 蔵
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下村畜産
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のんびり
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チャ豆作付け
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そり菜園 アイコ
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そり菜園 うね作り
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