2008/10/7

分とく山の野﨑洋光料理長が若手料理人に語る

「第14回レクチャーランチ&食事会」を開催

 9月20日(土)、渋谷支部は東京・港区の分とく山にて「第14回レクチャーランチ 分とく山野﨑洋光料理長が語る“食”と“職”の楽しさ発見!」を開催した。通常ランチ営業は行っていないが、野﨑料理長の特別なはからいでランチタイムに開催された今回のレクチャーランチには38名が参加した。

お話は野﨑氏が料理人になったきっかけから始まり、20歳の時、2店目の修行先の店で皆から一目置かれていた「鬼のキクチ」と呼ばれていた先輩に「魚を触りたい」「包丁を持ちたい」と訴えると「お前、片付け終わってるのか!」「そこ整理できていないだろう」と怒鳴られ、「やりたいことができないなら、こんな店、辞めてやる」と思いつつも意地があった野﨑氏は、「せめて掃除と整理整頓をクタクタになるまでやってみよう」と決め、3カ月間と期限を決めて朝7時前に出勤し、掃除、鍋磨き、冷蔵庫の整理を始めたという。すると、3カ月しないうちに仕事の流れに乗れるようになり、冷蔵庫の在庫が分かっているので調理場でも重宝がられて仕事がどんどん舞い込んで来たという。次に何が求められているか、先が読めるようになり、世界が違ってきたそうだ。その頃自分への応援歌にしていたのが歌手、水前寺清子さんの「神様の恋人」(日本クラウン)。「君が10時にねむるなら俺は夜明けの2時にねる ひとの倍やれ 5倍やれ それで勝負は5分と5分」。この歌をひとり口ずさみながらデッキブラシをかけたそうだ。野﨑氏は、今でも店のスタッフに聴かせることがあるというこの曲を流しながら、「身体を動かすことで見えてくることがある。何事も段取りなのだ」と語った。

数々の出会いを振り返り、毎晩のように店を訪れたカメラマンの秋山庄太郎氏に「40歳までは人の話に聴く耳を持った方がいいよ」と言われ、それについて野﨑氏は「40歳まで焦らなくて良いよ」と言われていると理解したそうだ。料理人の村上信夫氏は、ソースを練る真似をしながら「チャンスは練って待て」と語り、30歳の頃には熊谷喜八氏に「自分の好きに作った方が楽よ」と言われ、日本料理の既成概念の枠を超えた料理に目覚めたというエピソードが披露された。
野﨑氏は若い人へのメッセージとして「素直に人の話をすべて受け入れることが大事。自分の頭は1つしかないから、経験豊富な先輩方の頭を利用すること」と語り掛けた。参加した若い料理人は「大変感動した。自分の日々の勉強不足を痛感しました」と語っていた。

その後、野﨑氏とスタッフによる心づくしの昼食会が始まり、参加者は初秋を感じさせる料理の数々を味わい、心もお腹も大満足で会はお開きとなった。野﨑洋光料理長のこれまでの努力をお聴きし、「名料理人は1日にしてならず」と感じさせる充実したレクチャーランチとなった。

協賛:サッポロビール(株) 無濾過ビール「白穂乃香」

〔当日の献立〕
先附・・・三味豆腐(枝豆・南京・胡麻) 生海胆タピオカ べっ甲餡掛
前菜・・・潤香菊花和へ 銀杏長芋 鴨緑酢掛 昆布籠盛り 翡翠銀杏黄味雪洞 秋刀魚共味焼 萩飯蒸し
椀・・・鱧菊花糝葛 葛素麺 ズイキ芽蚕菊 吸い口柚子 
造り・・・鰈 河豚 蛸 江部胡瓜 こんにゃくゆば 梅肉醤油
中皿・・・無花果 黄味ヨーグルト掛
強肴・・・牛茄子香味ゼリー掛
食事・・・秋茗荷御飯
水菓子・・・有の実羹 青柚子


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